八千代くんのものになるまで、15秒


背中に回した腕に力を込める。
梓希くんのこと、大好きなんだよ。



「梓希くんは私を不安にさせないようにしてくれてたのに……ごめんなさい」



大切にするって、前に言ったのに、ごめんね。面倒な彼女で、ごめん。



「大好きな気持ちは、ずっと変わらないんだよ……」



どうすればいいんだろうね。
自分の気持ちと相手のこと、どっちも優先させたい時って、どうすればいいんだろう。

私は、梓希くんのことを縛りたくない。
でも、梓希くんの隣は誰にも譲りたくない。



「前にも言ったけど、俺は、蓮がいればそれだけでいいよ」



するりと私の頬を撫でて、視線を合わせる梓希くん。



「……ただ、余裕がないのは俺も同じで、」
「……」

「好きなのは俺だけなのかって、そういう気持ちになるのは、いつまで経っても慣れない。」
< 246 / 279 >

この作品をシェア

pagetop