八千代くんのものになるまで、15秒
ふと、梓希くんの手をとって駅まで走った時のことを思い出した。
……梓希くんは、自分の気持ちが報われない時のことを知っている。
「だから、蓮。俺のこともっと欲しがって」
「おねがい。」と、かすれた声でそう続ける。
梓希くんの過去の片想いを思い出して、
目の前にいる大好きな人の温もりを感じて。
ぎゅうっと胸が締め付けられた。
「っ梓希くん、だいすき」
言葉にしないと、伝わらないんだ。
相手のことを思う行動も、それ単体だと伝わるものも伝わらない。
「大好きだから、梓希くんの周りの人達のことも大事にしたいの」
「ん、」
「梓希くんが今まで大切にしてきたものは、これまでもずっと大事にしてほしい」