八千代くんのものになるまで、15秒


友達も、幼なじみも、兄弟も、ブックカバーも。


「大切なものもひっくるめて、私は梓希くんのことを大事にする」


梓希くんは、嬉しさを噛み締めるように小さく笑った。
前髪をはらって、私の額にキスを落とす。

「ありがとう」って、言ってくれた。


「俺も、蓮の大切なものを大事にしたい」
「うんっ」


よかった。ちゃんと話ができて。
もやもやしていた気持ちもようやく晴れた。


……あ。あと、もう一つだけ。



「えっと、もちろん、その……私のことも放って置かないでほしい、ので……」



そこのところ、どうぞよろしくお願いしますっ……みたいな。

パチパチ、梓希くんが瞬きを繰り返す。
うう、分かってるよ。自分でも恥ずかしいことを言ってるってことくらい。
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