八千代くんのものになるまで、15秒


休み時間や授業中に八千代くんのことを見つめても、彼は怒るどころか可笑しそうに笑うだけ。

八千代くんって、いつもどこか余裕そう。

この前だって……



『俺も倉木の真似してみていい?』
『へ?』



そう言って、私のことをじっと見つめてきた。
澄んだ瞳が私を捉えて、口元を楽しそうにゆるませて。

小首を傾げて私の顔を覗き込んできた八千代くんに、



『ちょっ、と、もうむり……』



私、5秒でアウトだった。

推しのアイドルにじぃっと見つめられてみなよ。
無条件にほっぺた熱くなってたまらなくなるからっ。



『倉木って本当に俺の顔すきだね』
『いや顔っていうか……もう存在そのものが尊いっていうか……』
『そんなこと言われると照れるなぁ』



恥ずかしがる素振りも見せず、いつものように優雅に笑った八千代くんを頭の中に思い浮かべる。


なんだろう、あぁいう八千代くんの余裕げなところも私の心をくすぐってくるんだよね。

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