八千代くんのものになるまで、15秒
はなから逃げるつもりはないんだけれど……
「……は、恥ずかしくて」
両手を胸の前でぎゅっと握りしめた。
慣れない。こういうの。いつまで経っても。
そんな私の様子に、梓希くんはくすりと笑う。
「いーよ。キスしよ、蓮」
「あ、うん……」
えっと、どうしよう。
まぶた……は、あの、閉じた方がいい?
改めてキスをするってなると、すごく緊張する。
し、梓希くん、いま何を考えてる……?
恐る恐る、梓希くんを見上げた。
口元に笑みを浮かべるだけで、動く気配はない。
「あの……?」
「そこじゃないでしょ」
「へ、」
「手。そこじゃなくて、どこに置いとくんだっけ」
その言葉に、夏休みのことを思い出してかぁっと頬がさらに熱くなるのを感じた。