八千代くんのものになるまで、15秒
「──3階の社会科準備室、あそこ、いつも鍵あいてるみたいだぜ」
渡り廊下でぼーっと立っていた女子に声をかければ、ハッとしたように振り向かれた。
大きな瞳に、俺の姿が映っているのが見える。
「ジュース好き?」
「え……」
「りんごとオレンジ。どっちがいい」
「……お、おれんじ」
「ん。じゃあ後で持ってくから。準備室で待ってろよ」
「えっ、ちょっと……!」
呼び止められた気もするけど、そんなのは無視して自動販売機へと向かう。
ちらり、あの女子が見ていた方向を確認する。
そこには、梓希と梓希に似た男、それから華奢な女が3人で職員室の前にいた。
自動販売機で紙パックのオレンジジュースを買って、準備室へと向かう。
途中、俺の名前を呼んだのは、小さい頃からずっと一緒だった蓮だった。