八千代くんのものになるまで、15秒
その時、呼び出し音が切れた。
代わりに、「蓮?」という、聞き慣れた声が聞こえてくる。
「あっ、梓希くん?あの、ゼリーとか買ってきたの……ドアノブにかけたらすぐ帰るから、開けてもらってもいいかな……」
そう言うと、ピーッという音ともに自動扉が開いた。
エレベーターに乗りながら、さっきの梓希くんの声を思い出す。
いつもより掠れてたな……症状、ひどいのかな。
梓希くんのお家の扉の前に着くと、そのタイミングを見計らったようにスマホが誰かからの着信を知らせた。
画面に表示されているのは梓希くんの名前で。
慌てて通話ボタンを押す。
「もしもしっ」
《あ、蓮、もう部屋の前着いた?》
「うんっ。今ついたところ……」