八千代くんのものになるまで、15秒
「もう少しで中間だから勉強しようと思って。家だと集中出来ないし」
「ふぅん……あ、数学だ。教えてやろうか?」
「えぇ……いいよー。瑛士教えるの下手だもん」
教室に入り、私の一個前の席に座った瑛士は「蓮のくせに生意気」なんて、クツクツと笑い声を立てる。
生意気ってアンタね……
仮に教えてって頼んでも「ひたすら覚えろ」しか言わないでしょうに。
瑛士は天才肌というかなんというか。
一度習ったものは忘れないという羨ましい特技を持ってる。
私達からしたらスーパースターだよ。
「てか、席替えしたのに蓮だけ場所変わってないなんてツイテないな」
「私はこの席気に入ってるからいいの」
廊下側の一番後ろ。
出入りしやすいし、意外と涼しくて居心地がいい。
「まぁ俺も蓮に声かけやすいからいいけど。隣だれ?」
「八千代くん」