八千代くんのものになるまで、15秒
いつも余裕そうで、優雅に笑う八千代くん。
「俺がどうかした?」
「っ!」
聞こえてきたその声に、思わず勢いよく顔を上げてしまった。
そんな私の反応に彼はクスクスと笑う。
ふ、不意の八千代くんにガッツいちゃった……
ていうかもう帰ったと思ったのにどうして教室に?
「忘れ物でも取りに来たの?」
「そんなとこ。……藤田と話すのは初めてだね」
机の中から一冊のノートを取り出し、瑛士に向かって笑いかける。
そんな八千代くんに、瑛士は驚いた様子。
「俺のこと知ってんの?」なんて、目を丸くしてる。
「そりゃあね。藤田人気者だから」
「そんなことねーけど……」
「まさか。今だって注目されてるし」
クイっと顎を動かして、チラチラとこちらを見ているクラスの女子の方を示した。
「倉木の隣に座らせてもらってる八千代です。よろしく」
「こちらこそ。いつも蓮がお世話になってます」