八千代くんのものになるまで、15秒


ちょっと、やめてよねっ。
お母さんみたいなこと言わないでよ。



「じゃあ俺先帰るわ。また明日迎えに行く」

「わっ、瑛士!髪の毛ぐちゃぐちゃにしないでっ」



わしゃわしゃとまるで犬を撫でるように両手を動かす瑛士をキッと睨む。

他の人も八千代くんもいるのに、こんなことされたらまた変な誤解されちゃうでしょうがっ。




「はは、悪い。八千代もじゃーな。……てか下の名前も聞いていい?」

「梓希」

「かっけー名前。じゃあまたな、梓希」




ひらり手を振って教室を出た瑛士。
まだ残っていた女子たちも、もうこっちを見てはいなさそう。


……ていうか、サラッと八千代くんのこと下の名前で呼び捨てにしてたっ。

私だってまだ呼んだことないのに……!




「倉木、顔すごいことになってる」

「……すごいことってなに……」

「はは。不貞腐れてるの?」




おっしゃる通りです。

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