八千代くんのものになるまで、15秒


柔らかな表情のまま、私のことをじっと見つめる。

そんな八千代くんに首を傾げた。どうしたの?




「どうして藤田じゃなくて俺のことばっかりなの?」




……それ、前に梢も同じようなこと言ってたな。
人気者の瑛士のことも視野に入れてみればって。


でも、私はね。




『──俺も一緒に探すよ』




どうしたって八千代くんにしか目が向かないんだよ。




「八千代くんに優しくしてもらったことがあるからかな」

「……俺に?」




覚えていないかもしれないけれど、去年の冬、私のローファーを一緒に探してくれたことがあったんだよ。

ある日の放課後、ローファーを隠されたことに気が付いてね。
瑛士の幼馴染ってだけでこんな嫌がらせまでされるのかってため息をついた時に、

八千代くんが声をかけてきてくれたの。




「その時から、私は八千代くんのファンなのです」



今考えれば、あの時私のローファーを隠したのはたった1ヶ月で別れた瑛士の元カノの仕業だったのかもしれないな。

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