八千代くんのものになるまで、15秒
指は細長くて綺麗だし、スタイルもいい。
姿勢がいいからか、歩いているだけでも品があるように見える。
字が綺麗、横顔が素敵、話し方も丁寧。
"〜じゃね?"とか絶対言わない。
委員会も日直の仕事もサボらない。
そして花が咲いたように柔らかく笑う。
これがまた堪らなく綺麗。
八千代くんは、格好いいというより、綺麗。
──だからというか、だからこそというか。
生暖かい春の風が強く吹いて、窓側に座る八千代くんの襟を揺らしたあの瞬間。
露わになった彼の首筋に付いていた物を見て、私はとても驚いたんだ。
「──はぁ?八千代にキスマーク?」
「そう、キスマーク」
恋とか愛とか、そういうものには疎いと思ってた"あの"八千代くんに、キスマークが付いてたんだよ。
「見間違いじゃなくて?」
「先週の身体測定で両目視力2.0でしたけどなにか?」
「いや圧が強い……分かったよ、信じるよ。でもそれが何?」