八千代くんのものになるまで、15秒
*
「──結局勉強そっちのけで八千代くんと話すのに夢中になっちゃった……」
「の割には楽しそうにしてたけどね」
「うぐ、」
八千代くんに続いて学校の階段を降りながらため息を吐いた。
色々と教えてくれた八千代くんにテンションが上がってしまって、下校時刻になったというのに勉強用ノートは真っ白のままだ。
……でも。
八千代くんの誕生日が来月だとか、
意外と辛い食べ物が好きだとか。
インドア派だから休みの日は映画とかドラマをよく観てるとか、
週に2回ぐらい喫茶店でアルバイトをしているとか。
大学生のお兄さんがいるだとか。
八千代くんのことを色々と教えてもらって、そりゃあ楽しかった。
楽しかったし、嬉しかった。
「明日は……明日こそは勉強する」
「帰ったら藤田に勉強教わるのはどう?」
「瑛士は天才型だから教えるのは下手なんだよ。それに今日はあいつバイトだから帰るの遅いし……」