八千代くんのものになるまで、15秒
着いた靴箱でローファーに履き替え、外に出る。
八千代くんが電車通学だということも教えてもらった。
私と使っている電車の線は違うけれど、駅まで一緒に帰れるのはやっぱり嬉しい。
「テスト2日前にバイト?余裕なんだね」
「ムカつくでしょ〜?」
クスクスと笑う八千代くん。
良かった、笑ってくれて。
少し八千代くんに違和感を感じてたから。
なんだか元気がないような、1人になりたくないような。
そんな風に見えたから。
「……そうだ、八千代くんのブックカバー、いつから使ってるの?」
黒革のブックカバーをかけていつも本を読んでいるでしょ?
長い間愛用してきたのかなって、それ見るたびに思ってたよ。
赤信号の横断歩道の前で立ち止まる。
ちらり、隣にいる八千代くんを見上げると、八千代くんは柔らかい表情を浮かべていた。
「あれは2年前の誕生日に貰ったの」
「……そーなんだ」