八千代くんのものになるまで、15秒


「どうしたの」って、優しい声音で聞いてくる。

そういうところが、八千代くんの素敵な部分で。

──私だけに見せて欲しい、とか、
そういうわけ分かんない気持ちも一緒に溢れてきて。

……だから、




「……他の人に、さわらせないで……」




こんなワガママが、口からこぼれ落ちてしまった。


ぎゅっと目をつぶる。
変なことを言ってしまった。

八千代くん、どう思ったかな。

私のこと、嫌に、思った……?





「……それ、無自覚で言ってるの」




そんな八千代くんの声が聞こえて、ハッとして彼に視線を移す。


綺麗な顔が私の方に向けられていて、
八千代くんの瞳に、吸い込まれそうで。

無自覚って、なにが……?




「あー……いや、いいや。もう」

「えっ、でも、」

「いいよ。たぶんそれ、無自覚だから」

「無自覚って、なにが……」

「倉木は知らなくていいよ」

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