八千代くんのものになるまで、15秒


毎日学校に行くだけで汗かいちゃうし。

せっかく前髪をアイロンで丁寧に巻いても汗ですぐに崩れちゃうし。



はぁ、とため息を吐いたところで、見慣れた後ろ姿を見つけた。





「……」




……やっぱり、姿勢が良いから歩いてるだけで品があるように見えるし

夏服に衣替えしたせいか、いつもより薄着な姿にドキドキしちゃうし。


ツヤのある黒髪が、白い肌に映えててとっても綺麗。



いつも横から眺めていたから、後ろ姿って新鮮だな。



……ていうか、八千代くんのうなじが見えるのって……いいな……。

今度席替えがあるときは、八千代くんの後ろの席になるように願っとこ。




「八千代くん見つけたから、私先いくね!」

「……」




よぉし、八千代くんに挨拶してこよ。

朝から八千代くんに通学路で会えるなんて嬉しすぎる!



彼の背中に向かって走り出す。

……いや、走り出そうとした。

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