八千代くんのものになるまで、15秒
「よ、用意が良すぎるよ」
「でしょ。私は日影で応援してるから、あんたは楽しみなさいよ」
いや、応援してくれるのは嬉しいけど……梢さん?
あなた、借り物競争に出ることは忘れないでよ?
「──あ。あんたの幼なじみ、これから走るみたいだよ」
その梢の言葉と、パンッという気持ちのいい音が重なった。
そういえば100m走に出るって言ってたっけ。
目の前のコーナーを走り去る瑛士の背中を見ながらふと思う。
「えいじーっ、がんばれーっ」と、周りの女子達だけじゃなくて男子達も瑛士の名前を呼ぶから、
やっぱり瑛士って人気者なんだなって改めて思った。
「相変わらず人気者ねぇ」
「ねー。顔だけはいいからね」
「顔だけじゃなくて、誰にでも気さくで優しいって評判よ」