八千代くんのものになるまで、15秒
さっきまで八千代くんに掴まれていた左腕に視線を移した。
『自分の気持ちを自覚できないところ……』って、いったい……?
「倉木」
「あっ、はい!」
電話は終わったのか、スマホをポケットにしまいながら、八千代くんは私の名前を呼んだ。
「俺そろそろ体育館に戻らなきゃ」
「あ……さすがに遅いって電話で怒られちゃった?」
「いや、怒られてはないから安心して。こんなとこまで連れてきちゃってごめん」
「っううん!それは!全然!気にしてないので!」
私も早く教室に戻らなきゃ。梢が待っているし……
「頑張ってね!私見てるからっ」
「倉木も。援団の次は選抜リレーでしょ?頑張って」
八千代くんからの"頑張って"という言葉は、どんな応援よりもパワーをもらえるよ。
八千代くんの後ろ姿を見ながら、私はぎゅっと両手を握りしめた。