八千代くんのものになるまで、15秒
どうか、百合さんが八千代くんのことを見てくれますように。
少しでも八千代くんの気持ちが報われますように。
胸の前で両手を組んで、ぎゅっと目をつぶる。
そんな私に、瑛士は口を開いた。
「……なんか、お前、梓希のことになると必死だな」
「当たり前でしょ。私は八千代くんのファンなんだから」
八千代くんが笑ってくれるなら、何でもしたいって思うの。
閉じていた瞼を開く。
グラウンドには、学ラン姿の団員達が待機している。
八千代くんの姿も見つけた。
……前髪、結局あげなかったんだ。
ふと、視線を感じて横を向くと、すぐ隣に瑛士がいた。
私と目線を合わせて、じっと見つめてくる。
な、なに?
「なんでお前、泣きそうになってんの?」