八千代くんのものになるまで、15秒
「え」という自分の声と、太鼓の音が重なった。
応援団のパフォーマンスが始まり、歓声がわっと響いてくる。
慌ててグラウンドに目を向けると、太鼓と掛け声に合わせて団員達が踊っている。
八千代くんもその中にいて、その真剣な表情に、また胸が鳴る。
「八千代くん、かっこいい……」
これだけ大勢の人がいて、一体この中の何人が八千代くんの魅力に気づくんだろう。
気づいてほしい。
気づかないでほしい。
なんかもう、頭の中ぐちゃぐちゃ。
『自分の気持ちを自覚できないところを見ると、何とかしてあげたいって思っちゃうから、』
自分の気持ちなんて、本当はよく分からない。
八千代くんに悲しい思いはしてほしくない。
百合さんとのことも、どうにかしてあげたい。