八千代くんのものになるまで、15秒
「疲れたね」と言いながら自分の席に座る八千代くん。
それから頬杖をついて、バッグを持って立ったままでいる私を見上げて、
「帰っちゃうの?倉木」
なんて、余裕げな笑みを浮かべながらそう言うもんだから。
……やっぱり、敵わないなぁ、と思う。
「……帰らない」
「よかった。じゃあ、はい」
「え?」
「脚、だして」
「……えっ……!?」
「あと手も。右手ね」
「ちょっ、」
や、八千代くん!?
いったい何をするつもりなの……!?
ガタッと椅子を動かして私に近づいた八千代くんは、
あわあわと焦る私を見て、可笑しそうに笑った。
「ただの手当てだから。リレーで転んでたでしょ」