゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
気分が悪い。
それが何のせいかはわからなかった。

この話の内容のせいなのか、異次元からの移動のせいか、はたまたクイーンの威圧感からか。

今にも倒れそうになりながら、アリスは歯を食いしばり足に力を入れた。


「即ちそなたは世界、世界はそなた。
プレザンスの未来はアリス、そなた次第でどうにでもなるのだ。」


冷や汗がこめかみを伝い床に落ちる。

ハニーは見かねてアリスの肩を抱き、小さく声をかけた。


「クイーン、話を断ち切って真に申し訳ありません。

どうやら神子はお体が優れない様子。
直ぐにでも部屋へとお連れしたいのですがよろしいでしょうか。

説明は私からしておきます故。」


クイーン・ハートネスは気に食わないような顔を見せる。


「体が優れん・・・そんなことはどうでもよかろう!
床にでも座らせておけばよい!」


「クイーン・ハートネス!」


アリスは朦朧としながらも顔を上げた。

その時のハニーの表情と言ったら、今まで見せてきた表情とはまるで違う。
見えない狂気がクイーンに向かって放たれていた。
それはまるで棘のように、槍のように―――。


「お約束をお忘れですか・・・?

選ばれし神子をお連れする代わりに、神子の一切の事柄は全て私が請け負うと。
今すぐにこの城を出ることは私にとって難しいことでは御座いません。」


クイーンの歯を食いしばる音が聞こえてきそうだった。
それほどに悔しそうな顔をしている。

この二人、互いに忠誠を誓い合った仲ではないのだろうか?


「・・・部屋へと連れてゆけ。
Mr.ハニー、子どもにもわかるよう、よく説明をしておけ・・・。」


「御意。」


するとハニーはアリスを丁寧に抱きかかえ、クイーンに背を向けた。


「忌々しい野うさぎめ・・・!」


最後にクイーンがそう呟いたのを、アリスは聞き逃さなかった。
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