゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
「アリス嬢がなすべきことは、まず宝珠を享受することです。」


「キョウジュ?」


ハニーは頷きシルクハットから地図を取り出した。
そしてそれを机の上へと広げる。

古い羊皮紙でできたそれは端の方が破けていた。


「享受とは受け入れるということ、即ちプレザンスから宝珠を授かることです。
今我々がいるのはここ、キングダムA。」


ハニーは地図の真ん中よりも東側にそれた位置を指差す。
確かにそこにキングダムAという文字が書かれている。

そこからいくらか北にいったところに塔の絵が描かれていた。


「キングダムAから東北に向かったところ、そこに“英知の塔”という名の塔があります。

“その塔の頂上に立つ者、雷鳴の光より天から宝珠を授からん”

そのような言い伝えがあります故、英知の塔の頂上に上ればおそらく宝珠を授かることができましょう。」


ハニーは地図を畳み、シルクハットの中へと投げ入れた。

アリスは不安で堪らなかった。
突然、摩訶不思議な世界に投げ出され、そして重すぎるほどの大役を担ってしまった。

果たしてことをうまく運ぶことができるのだろうか。


「お話はこれぐらいにしましょう。
そろそろお腹が減る頃ではありませんか?
お食事の用意をさせますので、少々お待ち下さい。」


アリスは空腹には慣れていた為、それほど気にはならなかった。

しかしハニーに言われるとなんだか空腹を感じる。
アリスは素直に夕食をもらうことにした。


外には満天の星空が広がり、何かから解放された気分になった。


まん丸な月が煌々と光り輝いていた。
< 25 / 83 >

この作品をシェア

pagetop