゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
 テーブルを満たす豪勢な食卓。
それを見てアリスは感嘆の声を漏らした。

七面鳥の照り焼きに色とりどりのサラダ、それ以外にもアリスが見たことの無い食事がテーブルを埋め尽くしていた。


「これ、全部食べていいの?」


「勿論。
お好きなものをお好きなだけお取りしますので、なんなりとお申し付けください。」


ハニーはにっこりと笑って言った。

まずアリスはすべての料理を少しずつ取り分けてもらい、それを全て食べきった。
その後に自分の気に入った物だけを食べる。


「ハニーは食べないの?」


不意に尋ねたのでハニーは目をまん丸にした。


「私・・・ですか?」


「せっかく椅子もあるんだし、余っちゃうのも勿体無いから一緒に食べようよ。
ね、お願い。」


お願いだと言われるとハニーの心は揺らぐ。
それがアリスの望んでいることならば従うべきであろう。

ハニーはアリスの言葉に甘え、食卓を共にした。


「私ね、誰かと食事をするのって初めて。」


ハニーはその言葉の意味が理解できずにいた。

それを悟ったのかアリスは口を開き始めた。


「育ての親も家族も意地悪で、私は自ら家を出たの。
あの家から出られたのは嬉しかったけどそれからの生活なんて最悪そのもの。

お風呂も満足に入れない、暖もまともに取れないような小屋みたいな家で生活して。
食事は毎日トマトのスープ。
あの街ってトマトだけは簡単に手に入るからさ。

だから今こうしてハニーと一緒にご飯を食べれるってこと、すごく嬉しいの。」


アリスは心からの笑顔を作って言った。

それはハニーの心に深く滲み、痛く刺さった。
気丈な娘に見えていたがそれはどうやら違うのだと気付かされた。
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