゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
最後に出てきたショートケーキが、アリスにとって最高の料理だった。


「わぁ!何これ?すっごく美味しそう!」


生クリームと苺がたっぷりと乗ったショートケーキはアリスの心をくすぐる。
その姿を見てハニーの顔も綻んだ。

アリスのキラキラとした瞳を見て安心もした。


「実はショートケーキは私の大好物でもあります。」


ケーキにかぶりつくアリスを横目にハニーが照れ臭そうに言った。


「甘い物が好きなの?うさぎのくせに?」


「否、甘い物はさほど好きではありませんよ。
ショートケーキが好きなだけです。

その、“うさぎのくせに”という言葉にはどういう意味合いが含まれているのですか?」


「うさぎってにんじんが好きでしょ?」


「普通はそうなのですか?」


「私の世界ではね。うさぎの好物はにんじんなの。」


「ふむ・・・大変興味深いですね。」


腕を組み考え込むハニーを見て、次元による文化の違いを感じた。
こちらではうさぎの好物はにんじんでは無いのだろうか。

そもそも兎が人間のように口を利き、歩いているというところから違うのだが。


「その名前って誰が付けてくれたの?ハニーの両親?」


「私には親などというものはありません。」


「じゃあ誰がつけてくれたの?」


するとハニーは口を噤んで窓の外を見た。

その表情はアリスには見えない。
一体何を想っているのだろうか・・・。


「さあ、誰だったでしょうかね・・・。」


何故その話をうやむやにしたのか、何故そのような取るに足らない話をしてくれなかったのか。

アリスにはわからなかった。

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