゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
女王は頭を深々と下げて全てを語った。

Mr.ハニーと交渉をし、アリスをプレザンスに連れてきたものの、まんまと逃げられてしまったこと。
ハニーの力を見くびっていたこと。

包み隠さず話した。


「申し訳御座いません。私の力不足に御座います。」


しかしその話を聞いても怒れる様子は微塵にも感じられない。
表情は見えないものの、空気で読み取れる。

炎は小さく揺らめいた。


「そうか・・・あの野うさぎがな・・・。
全て先を読まれていたという訳か。」


汗が額から落ち、床に小さな染みを作った。


「まあいい。頭を上げろ、クイーン・ハートネス。
お前は今まで通り宵の勢力を拡大すればいい。後はこちらに任せておけ。

何か動きがあれば逐一報告しろ。

いいか、これ程大きな失敗を犯した代償は大きいぞ。
次は無いからな・・・。」


それだけ言うと炎は大きく揺らめき、そして消えていった。



クイーンは大きく息をつき、額の汗を拭った。
じっとりと手のひらが濡れる。

あの男の圧迫感、精神を潰されるような恐怖、まるで心臓を握られたような気分になる。


恐ろしい。


しかし忠誠を誓ったという事を思い出し、自らを奮い立たせる。


“次は無いからな”


その言葉が、恐ろしくて堪らなかった。
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