゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
 キングダムAの城を抜け出したアリスとハニーは地面へと投げ出された。
ハニーが抱き庇ってくれたお陰で、アリスは怪我をせずにすんだ。

アリスはハニーの腕の中でも息が上がっていた。

迫り来る恐怖と襲い掛かるトランプ兵。
そのことを思い出しただけで動悸がする。


生まれて初めて命の危険を感じた。


「アリス嬢、大丈夫ですか?」


ハニーは落ち着かないアリスを見て問いかけた。


「・・・平気。ありがとう、助けてくれて。」


アリスは起き上がって辺りを見回した。

地面には腰丈ほどの草が生えており、それが夜風に靡いている。
遠くには先程までいたはずのキングダムAの城が見えた。


「キングダムAは国とは呼び難い城一つで成り立つ小国。
そこから離れてしまえば後は荒地が続くのみです。

お疲れだというのはわかっておりますが、先を急ぎましょう。
すぐに追っ手が参ります故。」


アリスは頷いて立ち上がった。

少々夜風が身に沁みる。
アリスは腕を抱いた。


「少々冷えますね。」


ハニーはシルクハットを取り、そこから上着のような物を取り出した。


「そこって何でも入ってるの!?」


アリスが驚いて尋ねるとハニーは笑った。


「許容範囲内であれば、望んだものは全て。」


取り出したのは黒いマントだった。
それにはフードも着いている。

ハニーはそれをアリスに着せた。


「黒ならば闇にも紛れましょう。」


そして一歩前へと踏み出したのだった。

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