゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
あの絵の中の女性がずっとアリスに語りかけていた。
何のために?

おそらくそれは、彼女がこのプレザンスを統率していた者だからだろう。

アリスは胸元に光る宝石を見て確信した。
あれがおそらく宝珠なのだ。


「統治者って、女の人だったんだ・・・。」


アリスはずっと男性が嘗てのプレザンスを治めていたと思い込んでいた。

しかし事実は正反対。
この可憐で華奢な女性が世界の全てを握っていたのだ。



 ぼんやりと絵を眺めていると、妙なざわめきが聞こえた。
ハニーを見ればいつかのように耳をピンと立てている。


「アリス嬢、追っ手です!」


するとあのトランプの兵隊達が、今来たばかりのドアを蹴破って部屋へと入って来た。

アリスは小さく悲鳴を漏らしハニーの後ろへと隠れる。
ハニーはアリスを守るようにして杖を構えた。


「お逃げ下さい!ここは私が食い止めます故!」


「嫌っ!一人じゃやだっ!!!」


「アリス嬢!!!」


アリスは涙しそうになった。

一人は嫌だ。
この大人数の敵の中で、本当にハニーは生きて帰ってくるのか?

そんな疑問が渦を巻いた。


「すぐそこの小さな出口があるのが見えますか?
そこから塔の天辺へ出ることができます。

さすれば宝珠を授かることが出来るでしょう。

さあ、行くのです!」


アリスは涙をこらえた。
目の前には必死で戦うハニーがいる。

ここで泣いてはいけないと、誰かに言われたような気がした。


「ハニー、死んだら承知しないから。」


ハニーの背中でアリスが小さく呟いた。


「御意。」


その言葉だけを聞いてアリスは頂上を目指し走り出した。

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