゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
「しかし盗賊頭、その話少々おかしくはないか?

そもそもこの国は王位継承が問題となっているのだろう?
それならば後者の姫君を攫うべきではないのか?

【深緑の薔薇】とやら、貴様等は一体何をしようと企んでいるのだ?
この国の君主をエヴァ・イニーネにさせたいのか、それとも―――。」


するとザックはハニーに歩み寄り、目線を合わせるようにしゃがみこんだ。


「随分と頭のいいペットを飼ってるんだな、お譲ちゃん。
それとも最近の【カアフ】は頭脳明晰につくられてんのかい?」


【カアフ】という未知の単語について尋ねようとした時、ハニーが口を開いた。


「口を閉ざせ、盗賊風情が。」


杖の先をザックに向け、今までに見たことの無いような表情で睨みつける。
その姿にぞくりと鳥肌さえ立った。

憎悪と憤怒が入り混じった表情・・・。


「悪かった悪かったよ、もう言わねぇから安心してくれ。」


ザックはそんなハニーに怖気づくこともなく、両手を挙げてふざけたように宥めた。
この余裕は一体どこからくるのだろうか。

しかしそれに気付かされたように、ハニーは杖を下ろした。


「大した理由なんてありゃしねえよ。
俺はリル=イニーネと話がしたいだけさ。」


ザックは伏し目がちにそう言った。


大それたことをする割には理由がはっきりしていない。
おそらく何か隠しているのだろう。

しかしその真意はわからないままだった。


ふとザックの表情を除き見ればその表情はどことなく悲しそうで、けれど慈しむ様な目をしていた。



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