゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
 ただひたすらに、足を動かした。
まるで機械の様に。

誰もいないところまで、遠く異国の地まで逃げてしまいたかった。


アリスは来た事もないような川原にたどり着き、土手を駆け下りた。
その中腹で躓き、ごろごろと派手に転げ落ちる。

それすら滑稽だった。


体の動きが止まった所で顔を突っ伏して涙した。


両親の顔など知らない。
ましてどんな人間かも知らない。

何をして、どんな生活をし、何を理由にアリスを手放したのか。

何も知らなかった。



けれど、侮辱されるのだけは耐えられなかったのだ。



きっと愛されていない訳では無い。
そう思っていたし、そう信じていたかった。

ヴァネッサに言われた言葉が頭を駆け巡る。


いざ人に言われると、胸に突き刺さるような痛みを担う。





お父さん、お母さん、なんで私を捨てたの?




アリスは空に投げかけた。

しかしその返事は返ってくることなどなく、ただ乾いた風が通り過ぎるだけだった。


虚しい。


ただ虚しさだけが過ぎて行く。



もう、このまま死んでしまおうか。
川に身を投げたら楽に死ねるだろうか。

もうみんなみんないなくなればいい。

ヴァネッサも、その仲間も、小母さんも、みんなみんな。


アリスは声を上げて泣いた。



すると背中に人の気配を感じる。

草を踏み分ける音がした。
< 6 / 83 >

この作品をシェア

pagetop