゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・

*過去との対峙*

 その後は散々だった。

先人を切って逃げるザック。
その肩に担がれた暴れる姫君。

ザックを追う盗賊一味。

そして最後尾を走るアリスとハニー。


衛兵達が国王の命によって【深緑の薔薇】をしつこく追い、ハニーは耐えかねて魔法で追っ手を食い止めた。
そのお陰でこうしてなんとか逃げ切ることができたのだった。


アリスの脳裏にはリル姫をさらった瞬間の式場の様子が、こと細かに記憶されていた。


戸惑う場内の人々。
衛兵に命を下す国王。
両手で口を覆い、ただ見ていることしかできない女王。
“お姉様”と呼びかけるもう一人の姫君。


プレザンスを守る人間が、何故こんなことをしているのだろうか。

アリスは自問自答した。


「アリス嬢・・・余り思い詰めぬ様・・・。」


ハニーはそっと肩に手を置いて囁いた。


「うん・・・。ありがと。」


しかし目の前にある風景、それが見事に滑稽で仕方無い。


ボロボロの椅子に座らされたこの国の姫君。
それを取り囲む盗賊一味の面々。


姫君は一切怯えた様子も見せず、何かを乞う訳でも無く、しゃんと胸を張っていた。


これこそ一国の姫君の風格なのだとアリスは思った。
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