゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
やはり一国の姫君とあれば風格というものがある。
喩え忌み嫌われていようとも、彼女は列記とした王族の一人なのだということを実感する。


「しかし久しいな・・・ザック。」


リルがやんわりと微笑んだのをアリスは見逃さなかった。

笑った・・・氷のような姫君が。
しかしその笑顔は美しく、可憐で慎ましやかだった。


「昔はよく遊んだもんな。
俺と、お前と、それからエヴァの三人でさ。」


エヴァの名前を聞いた瞬間、リルの表情が一変した。


「あの女の話はするな。」


また氷のような表情に戻る。
ザックはリルを見て難しそうな表情を作った。


「なあリル、俺はお前に話があってここまでさらってきたんだ。
それこそ命がけで。」


「話など無いだろう。
ザック、お前もお父様やお母様、国の民と同じような考えを持っているのか!?
エヴァに王位を預けたほうがいいと考えている人間の一人なのだろう!?」


「違う!」


「ならば何故、私をさらったのだ!」


「お前に気付いてもらわなきゃいけないことがあるからだ!!!」


辺りがしんと静まり返った。


「俺が話してもどうにもならねぇ。
おまえ自身が自分の力で気付かなきゃいけないことがあるんだ・・・。

目を覚ませよ、リル。
お前には見なきゃいけない“現実”があるはずだ。」


その言葉の意味はアリスには当然わかるはずがなかった。


勿論、リル・イニーネにも・・・。
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