゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
 リルは部屋を出て行った。
すぐにアリスが後を追ったから心配はないだろう。

ザックは頭を抱えてしゃがみこんでいる。

一体二人の間には何があるのか。
ザックは何を伝えようとしているのか。

ハニーはそれを考えていた。


「くっそ・・・。あの馬鹿・・・。」


ザックは天を仰ぎ、うんざりしたような口調で呟く。


「あのような言い方は無礼極まりないとは思わないのか?」


「説教かよ。」


「そういう訳では無い。
仮に幼馴染だとしても、何もわからぬリル姫に一方的に責め立てる様な真似は如何かと訊いている。」


「責めてなんかいねぇだろ・・・。」


「私にはそのように聞こえた。」


苦虫を噛み潰したような顔で、ザックはハニーを見た。


「お前は、どこまで知ってんだ?」


ハニーは言葉通り何も知らなかった。
故にザックの言葉に答えることは勿論できない。

シルクハットを頭から取り、ハニーはぼんやりとそれを見つめた。


「私は何も知らない。此の言葉に偽りは無し。
長年プレザンスを含め旅はしてきたが知らないことの方が多いというものだ。」


知ったような顔をしてそのような言葉をさらりと吐く。
それがどうも胡散臭くてならない。

しかしザックは誰かに話しておきたかった。


自分と、リル、そしてエヴァのことを・・・。


「お前、口は堅いよな。」


ザックは口を開き始めた。
< 69 / 83 >

この作品をシェア

pagetop