花岡みやびの野望とそれに伴う隣人Aの葛藤。
「よっ須藤、おつかれー」
「…は?」
目の前には、ドアを開けた姿勢で固まっている私の隣人、須藤隼人。
「なんだよ急に、しかも何でそのカッコ」
「いっやー、こう改めて着てみるとさ!ほんっと須藤ってセンスいいよねー、さすが!」
須藤があの初デートという名の講義で選んだ、白いワンピースから私に視線を移して訝し気に眉をひそめた。
「なんか変だぞお前」
「ほんっと須藤がこんなにセンスいいなんて知らなかった~!」
「おい人の話を…」
「すごい!マジですごい!激やば!」
「だから…」
「まじでセンスいいよね~!…えっと後は…」
「…花岡」
須藤が私の手からスマホを奪い取った。
「“合コンの必勝テク★魔法のさしすせそ”…?」
「ちょっと返して…っ」
取り返そうと伸ばした私の手首を須藤がつかんで。
「詳しーく中で話聞かせてもらおうか?」
にっこり笑った須藤の目は、だがしかし全く笑っていなかった。