花岡みやびの野望とそれに伴う隣人Aの葛藤。
アパートの前に着き、自然と繋いでいた手が離れた。
「じゃあ今日はありがと!講義だけど楽しかった」
そう言って鍵を開け、自分の部屋に入ろうとしたら
グイッ
「えっ…」
スポ、と気づいたら、須藤の胸の中におさまっていた。
「えっ…と、須藤。もう講義は終わったんじゃ?」
「来週の土曜も今日と同じ時間でいい?」
「来週もするの!?」
「…当たり前だろ。こんな子供みたいなデート1回しただけで、お前が目指すビッチになれるとでも?」
「…たしかに」
須藤の胸の中から顔をあげて、須藤を見た。
須藤は感情の読めない目で、じっと私を見ていた。
「わかった。じゃあ、来週も同じ時間で、おねシャス!!」
「…だから色気」
「うう、急には無理だって。これが私だもん」
まあ、色気はおいおいね、おいおい!
「…ま、そうだな」
須藤が私から離れる。
「んじゃ、そーゆうことで。おやすみ」
「うん、おやすみー!」
パタン、と須藤が部屋のドアの向こうに消えてから、はたと気づく。
須藤と“おやすみ”なんて言いあったの、ひょっとして初めてじゃない!?