花岡みやびの野望とそれに伴う隣人Aの葛藤。
「これ君のでしょ?」
ポン、と後ろから肩を叩かれ振り向くと、私より頭ひとつ分背が高い男の子が、にっこり笑って立っていた。
「あっ…アパートの鍵!」
今日から私が一人暮らしをする予定の、アパートの鍵だ。
「ありがとうございます!えっ、落としてました!?」
「うん、さっきコートのポケットからスマホ取り出す時に落ちてたよ。全然気づいてなくて焦った」
「うわあ、ありがとうございます!!」
危うく入学早々家に帰れないとこだった…!
ガバッと勢いよく頭を下げた私に、彼は一瞬面食らったように瞬きを一つして。
それからハハッと心底おかしそうに笑った。
「礼儀正しいなー。てか俺らタメだし、敬語じゃなくてよくね?
俺、体育学科の橘周平。ちなサッカー部」
「ぶ、武道学科の花岡みやびです!剣道部です!!」
「だからー、敬語」
「ハッ!!」
言ったそばから!!
焦る私に、また破顔する橘くん。大きく笑う人だな、と思った。
「おっけ、剣道部ね。だから礼儀正しいんだ?学科違うけど仲良くしよーぜ、みやび」
み、みやび…!!!