記念写真を一枚
自分等の軍は、戦争が多い。

それに(ともな)って、書類も多い。


一番忙しくなるのは戦争中ではなく、戦争前と戦争後だ。

今は戦争後なので、軍内は慌ただしくなっている。

さすがに今回は大きい戦争だったから書類も多くなり、内ゲバなどはなかった。

中でも書記長豚平さんは特に忙しく、ずっと書記長室にこもりっぱなし。


「あ、豚平さん」


だから今こうやって廊下をすれ違うのは珍しく、思わず呼び止めてしまった。


「…… なんや?」


彼の声はいつもより低く、機嫌が悪いのかと疑うほど顔が歪んでいた。

だがそれも一秒経つ前に普段の顔へ戻り、先程の表情は幻覚だと思いそうになる。


「……いえ。書類仕事、大変そうなんで手伝おうかと」


そんな豚平さんに「本当はなんの用もないです」なんて言えず、適当に言葉を並べておく。
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