記念写真を一枚
自分は今あらかた書類が片付いており、他の人を手伝う時間があった。

だから一番忙しそうな彼を手伝えたら、なんて思わなかった訳では無い。


「……ありがとな。でも、ええわ」


そう言って通り過ぎようとした彼の腕を、咄嗟につかむ。


「い゛ッッ」


途端押し殺したような叫び声を上げたため、反射で手を離す。

豚平さんの腕にはじわりと血が滲んでいて、自分でもよく分からない。

え、もしかして俺めっちゃ力強い?

なんてボケは一回置いておき、もしやと思い腕をまくる。

包帯が巻かれていた。


おかしい。

確か、彼は戦争中怪我をしなかったはずだ。

まさか他にも怪我をおっているのではと思いズボンの裾をまくると、包帯が見えた。


「豚平さん」

「……はい」

「後で色々聞くんで、とりあえず医務室行きましょう。ほら、乗ってください」


豚平さんの前にしゃがみ、おんぶする格好をした。


「いや、医務室までなら歩けるわ」


恥ずかしいのか遠慮しているのかオロオロしている彼がそう言った。

だが豚平さんは無理をするので信用ならない。


「それとも、お姫様抱っこの方がいいっすか?」

「…… おんぶでお願いします」


反省させるために、わざと全員に見せびらかすルートを通ろうと思ったが、可哀想なので人気のない道を選んだ。
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