丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
告白

【杏樹】

数日後、中学を卒業して10年が経ったこの日。
久しぶりにまた、五人が集まっていた━━━━━

「乾杯~!!」

料亭の離れで、ゆっくり料理と酒に舌鼓をうち思い出話に花を咲かせていた。

杏樹「━━━━━でさ!結局、先生に見つかって……!」
紀信「ハハハッ!!そうだったね!思い出した!」
宗匠「あれはウケたな!!」

凱吾「今先生、主幹教諭らしい」
鈴嶺「そうなんだ!凄い!」
凱吾「無理矢理させられてるんじゃない?
あの先生、押しに弱いし」

紀信「え?でも、主幹教諭って試験あるでしょ?」
凱吾「うん。だから教頭とかに上手く乗せられて試験受けてさせられたってこと」

宗匠「まぁ、確かにあの先公ならあり得るかもな(笑)」

鈴嶺「そうなんだ!先生、元気にしてるかな?」
凱吾「鈴嶺、気になる?」
鈴嶺「うん!女子の憧れだったから!」

凱吾「……………あんな先生のどこがいいの?」
鈴嶺「え?凱くん?」

凱吾「だって!!
お人好しで押しに弱い、顔も頭も大したことないし、男としていいとこなんて一つもない!
そんな奴のどこがいいの!?」
途端に狼狽えだした、凱吾。
鈴嶺の肩を持ち、責めたてた。

鈴嶺「え?凱くん、痛い!!」
宗匠「ちょっ…!!?凱吾!!やめろ!!」
杏樹「凱吾!!」
紀信「凱吾!!やめてよ!!」

宗匠と紀信に止められ、なんとか落ち着く凱吾。

杏樹「鈴嶺、大丈夫?」
鈴嶺「うん…凱…く……」

凱吾「ごめん、鈴嶺…ごめん……」

鈴嶺「私、凱くんが好き!!」
凱吾「え?」
鈴嶺「好きだよ!凱くん!好き!」
凱吾「うん、ありがとう!」
鈴嶺「だから、大丈夫だよ!」
凱吾「うん、ごめん」

杏樹「凱吾、ただの憧れよ!
凱吾だって、いたでしょ?憧れの先生とか。
ほら、結構綺麗な先生いたじゃん!」

凱吾「は?僕は、鈴嶺しか見てない。
小1の入学式から」

杏樹「凱吾…」

凱吾「ほんっと、誰もわかってない。
僕が、鈴嶺をどんなに好きか……誰も…
……………てか、杏樹ならわかると思ってたんだけどな」
意味深に杏樹を見る、凱吾。

杏樹「え……」

凱吾「何を犠牲にしても、放れられない相手がいること。出来ることなら、一人占めしたいって気持ちだ」

杏樹「凱吾…何を……」

凱吾「ん?別に!」

宗匠「何の話だ?」
紀信「さぁ?」
鈴嶺「…??」

杏樹は、凱吾から目をそらしていた。

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