丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
佐木が会計を終え、急いで鈴嶺の元に戻ろうとする。
紀信に抱き締められている鈴嶺に気づく。

佐木「━━━━━━!!!?
やっぱり……」

二人の元に向かい、声をかけた。
佐木「紀信様!!」

紀信「━━━━━はっ!!?ご、ごめん、鈴嶺!!」
鈴嶺「………」
紀信が我に返ったように、バッと鈴嶺を離す。
鈴嶺はぐったりしていた。

紀信「鈴嶺!!?」
佐木「お嬢様!!?
紀信様、とにかく屋敷に帰りますので」

佐木が紀信から鈴嶺を離す。

紀信「あの…佐木さ━━━━━━」
佐木「今日!紀信様のお仕事終わったら、少しお話しませんか?」

紀信「え?あ、は、はい…」
佐木「では…お仕事終わり次第、私に連絡ください」

佐木はそう言うと、鈴嶺を抱き上げ去っていった。



そして紀信の仕事が終わり、二人はカフェで会っていた。
佐木「お仕事でお疲れの時に、申し訳ありません」
頭を下げ言う、佐木。

紀信「いえ…あ、鈴嶺は?」
紀信は心なしか、緊張していた。

佐木「大丈夫です。お薬が効いてきて、呼吸も穏やかになりました」
紀信「そうですか。良かった……!」
ホッとしたように微笑む、紀信。

佐木はその紀信の表情を見て微笑み、一度目を瞑って開け、紀信を見据えた。
佐木「単刀直入に申し上げます。
鈴嶺お嬢様の事は、諦めてください」
再度紀信に頭を下げた。

紀信「え……?佐木…さん…?」

佐木「私はもう……あんな凱吾様を見たくない」

紀信「凱吾ですか?」

佐木「今からお話しすることは、紀信様の心の中に留めておいていただきたいんですが……」
紀信「はい」

佐木「凱吾様のお嬢様への想い“異常”だと思われたことありませんか?」
紀信「え?あ、はい。異常とゆうか、鈴嶺を愛しすぎてるとゆうか……」

佐木「私は、正直……お嬢様と凱吾様の結婚反対です。旦那様や奥様もおっしゃってるんですが、凱吾様の想いが強すぎてお嬢様が傷つくのではないかと……心配で………」

紀信「まさか、それでなかなか二人は結婚できないんですか?」

佐木「はい。凱吾様が“普通”なら、ご両親も私も喜んでお嬢様を嫁がせてます。あの方程、完璧で素晴らしい人間はいない。
あの恐ろしささえ、なければ……」

紀信「佐木さん…」

佐木「私、個人の意見としては……紀信様にお嬢様をお任せしたい」

紀信「え////!!?」
佐木「貴方様なら、お嬢様を慈しむように愛してくれるはず。私も安心して過ごすことができる」
佐木は、穏やかな表情で紀信を見ていた。

紀信「…………ご心配なく!凱吾から鈴嶺を奪おうなんて思ってません。
というより…僕には奪うなんて、できない……!」

紀信は切なく微笑み言った。
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