君と新しい未来が始まる。

パチリ

目を開くと視界に入ったのは先輩の顔。

私は確か、坂を登っていたはず。ここは...?

『起きた?大丈夫?』

『ぁ、はぃ。』

咄嗟に返事はしたものの、声が掠れてうまくしゃべれ

ない。

『待ってね、水飲もうか。』

先輩は優しく笑って言うけれど私には状況が理解でき

ない。なんで先輩が私のところに?

『はい、どうぞ。』

『ぁ、りがとぅ、ござぃ、ます』

受け取った水で喉を潤す。自分が思っていたより体は

水分を欲していたようでコップ一杯の水は一瞬で無く

なってしまった。

『あの、なんで先輩が……?』

緊張しながらも先輩に問う。これまで、先輩と私に接

点などなかったはずだ。

『あ、あぁ〜』

ちょっと気まずそうに目を逸らしてから、私の頭にぽ

んと手を置くと、

『後ろに居たんだわ。目の前で倒れたからさ、俺が運

んだの』

『えっ』

運んだ……というのは、その、

『で、起きるまで診てたって感じ?』

頬をかいて恥ずかしそうにする様子にこちらまで恥ず

かしくなった。

『あ、ありがとうございます!すみません、重かった

ですよね?』

羞恥に顔が赤くなる。

『全然!!むしろ軽すぎっていうか……』

お互いなんとも言えぬ空気に固まっていると

『起きたかー大丈夫かー』

顧問の先生がノックもなしに豪快にドアを開けて入っ

てきた。

『ん?なんか顔赤くねぇか?』

『気のせいです!!』

大きな声で否定を口にする私に不思議そうな顔をしな

がら

『そうかー?ま、寝とけ』

となんとまぁ、軽い返事をした。

『じゃ、じゃあ俺は部屋に戻ります.......お大事に。』

そそくさと足早にさった先輩の姿にほっと息をつい

た。
< 5 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop