絢なすひとと
「うーん、そうですね」
彼が眉を寄せて、視線をななめ上に向ける。
無数の回答の選択肢の中から、ベストなものを抽出しようとしているようだ。
視線を戻すと、ややあらたまった口調で、森崎さん、と言った。
「森崎さんが今持っている一番の資産って、なんだと思いますか?」
「なんでしょう、銀行の預金とかですかね」
吹けば飛ぶようなものだけど。
「現時点で森崎さんが所持している一番の資産は、森崎さんご自身です」
「自分、ですか?」
よく飲みこめなくて、小首をかしげる。
「自分の収入以上に稼ぎを産んでくれるものって、なかなかないでしょう。極端な話、モナリザを所有していれば、人に見せてお金を取るだけで遊んで暮らせるわけですが」
なるほど、と頷く。
「そういった意味では、僕も森崎さんと同じように、自分という資産を労働で運用して食べているわけです」
資産の価値がかけ離れているような、と思いながら話の巧みさに引きつけられる。
彼が眉を寄せて、視線をななめ上に向ける。
無数の回答の選択肢の中から、ベストなものを抽出しようとしているようだ。
視線を戻すと、ややあらたまった口調で、森崎さん、と言った。
「森崎さんが今持っている一番の資産って、なんだと思いますか?」
「なんでしょう、銀行の預金とかですかね」
吹けば飛ぶようなものだけど。
「現時点で森崎さんが所持している一番の資産は、森崎さんご自身です」
「自分、ですか?」
よく飲みこめなくて、小首をかしげる。
「自分の収入以上に稼ぎを産んでくれるものって、なかなかないでしょう。極端な話、モナリザを所有していれば、人に見せてお金を取るだけで遊んで暮らせるわけですが」
なるほど、と頷く。
「そういった意味では、僕も森崎さんと同じように、自分という資産を労働で運用して食べているわけです」
資産の価値がかけ離れているような、と思いながら話の巧みさに引きつけられる。