絢なすひとと


仕事ができる人ほどアクションが早い、と会社員時代に先輩から聞いたことがあった。
七尾さんと出会って、わたしはその言葉を実感することになった。

彼からスマホに着信があったのは、出会って二、三日後のことだった。
マナーモードにしていたので、その時は気づかず電車に乗ってスマホをチェックして、『七尾 司』の着信履歴にかるく目を見張った。

駅に降りてからかけ直すと、数コールで〈もしもし〉と応答があった。
電話越しにもソフトだけれど深みのある、耳に心地いい声だ。

「あ、森崎です。先ほどお電話いただきましたでしょうか?」

〈はい、折り返しありがとうございます。先日お会いした時間帯からすると、そろそろお仕事上がりかなと思って、電話させてもらいました〉

「おっしゃる通り、いま仕事帰りです」

〈森崎さん、さっそくなんですけど、今後のキャリアプランのことでお話させていただきたいと思って。近々お会いできませんか〉
< 17 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop