絢なすひとと
仕立てのいいスーツに身をつつんだ七尾さんの姿は、まさに一分の隙もないビジネスマンといった様子で。
対してわたしはといえば、手持ちの服の中では上等なワンピースを着てきたけれど、仕事上がりで髪は一つに結んだだけでメイクも直していない。
目の前に座る男性や、おしゃれな店の雰囲気に釣り合っているか心配になってしまう。

「そういえば、いちおう病院に行ったんですけど、骨に異常は無かったです」

「それはよかったです」

「おかげで森崎さんと知り合えたから、災い転じて吉ということで」

照れをごまかしたくて、いえそんな、などと口の中でつぶやいてラテをすする。

「森崎さんは、前のブライダルプロデュースの会社ではどんな仕事をされていたんですか?」

「ええと、小さな会社だったので何でも屋なところはありましたけど、所属は企画部でした。予算やシチュエーションに応じて、さまざまなプランを提案するんです」

「たしかに向いてそうですね」
わたしの返事に、彼が大きくうなずいた。
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