絢なすひとと
あっ、とわたしが心の中で小さく叫ぶのと、気づかず足を踏み出そうとした男性が、バランスを失い手と膝をついて倒れるのが同時だった。
鈍い衝撃音が響く。
「だいじょうぶですか!?」
必死だった。
ステップから降りながら、ともかくかがみ込んで、まさしく彼の “足を引っ張っている” 靴紐を掴むと、力まかせにエスカレーターから引き抜いた。
陸上のクラウチングスタートのような格好でうずくまる男性に手を差し出すと、こちらの腕につかまり、ふらつきながらも立ち上がった。
後から上がってくる人たちは、事情が分からず怪訝そうにわたしたちの横をすり抜けるように過ぎてゆく。
とりあえずここから離れなければと「歩けますか? だいじょうぶですか?」と見上げて声をかけると、彼は痛みに顔をしかめながらも小さく頷いた。
鈍い衝撃音が響く。
「だいじょうぶですか!?」
必死だった。
ステップから降りながら、ともかくかがみ込んで、まさしく彼の “足を引っ張っている” 靴紐を掴むと、力まかせにエスカレーターから引き抜いた。
陸上のクラウチングスタートのような格好でうずくまる男性に手を差し出すと、こちらの腕につかまり、ふらつきながらも立ち上がった。
後から上がってくる人たちは、事情が分からず怪訝そうにわたしたちの横をすり抜けるように過ぎてゆく。
とりあえずここから離れなければと「歩けますか? だいじょうぶですか?」と見上げて声をかけると、彼は痛みに顔をしかめながらも小さく頷いた。