絢なすひとと
「SNS?」と七尾さんがその単語を繰り返す。

はい、と頷く。まだ思いつきの段階だけど。
「ブライダル業界でも、インターネットを通じた口コミの力は感じていたので」

(いき)” や “洒落(しゃれ)” を体現しているような美幸先生の着こなしも、「美しく華やかに装いたい」という女性の憧れが詰まったような桜帆さんの姿も、どちらもとても魅力的だ。
そんな着物の世界を、ひとりでも多くの人に知ってもらえたら。

先入観にとらわれず、「イケてる」ものに敏感なのが、若い世代の特徴だ。
いきなり購買に結びつかなくても、着物に興味を持ってもらえるきっかけになるかもしれない。

それに若い女性には、成人式、大学の卒業式、結婚式、夏には浴衣で夏祭りと、着物にまつわるイベントもある。
幅広くPRするツールとして、SNSは有効ではないか。

わたしのそんな話に、テーブルをはさんだ七尾さんは丁寧に耳を傾けてくれた。

「扱っているものが時代がかっているからか、業界全体が古風なところがあるんだ。今ホームページの刷新は進めているけど、森崎さんが言うようにSNSを活用するのも手かもしれない。企画書出してくれる?」

もちろんです、と答える声がはずんでいるのが自分でも分かる。
頭の中ではもう、アイディアがふくらみ始めていた。
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