絢なすひとと
出店する場所は、わたしが以前パート勤めをしていた、あの複合テナントビルだ。
都市の再開発計画で建設された総合複合施設群の一角に、ほづみ屋が誘致されたのだ。
新店のプロジェクトに心血を注ぎすぎてしまったことが、季美子さんの急逝の遠因ではないかと、誰もはっきりと口には出さないけれど、そんな空気も感じとれる。
母を支えられなかった、という宗介さん桜帆さんの悔いは深く、だからこそ新店舗の成功にかける思いはひとしおのようだ。
そもそも司さんがあのビルを訪れていたのも、出店のための下見が目的だった。
あれこれ思案していたために、靴紐が解けかけているのに気づかずエスカレーターに乗ってしまって。
そんなこんなの結果で、わたしはほづみ屋で働いているのだから、巡り合わせというのはつくづく不思議だ。
「森崎さん、張り切ってくれるのはありがたいけど、頑張りすぎないで。毎日の業務もあるから、企画書はできるときでいいよ」
「一日でも早くお役に立てるようになりたくて…」
わたしを見込んでくれた七尾さんに、恩返しがしたい。
都市の再開発計画で建設された総合複合施設群の一角に、ほづみ屋が誘致されたのだ。
新店のプロジェクトに心血を注ぎすぎてしまったことが、季美子さんの急逝の遠因ではないかと、誰もはっきりと口には出さないけれど、そんな空気も感じとれる。
母を支えられなかった、という宗介さん桜帆さんの悔いは深く、だからこそ新店舗の成功にかける思いはひとしおのようだ。
そもそも司さんがあのビルを訪れていたのも、出店のための下見が目的だった。
あれこれ思案していたために、靴紐が解けかけているのに気づかずエスカレーターに乗ってしまって。
そんなこんなの結果で、わたしはほづみ屋で働いているのだから、巡り合わせというのはつくづく不思議だ。
「森崎さん、張り切ってくれるのはありがたいけど、頑張りすぎないで。毎日の業務もあるから、企画書はできるときでいいよ」
「一日でも早くお役に立てるようになりたくて…」
わたしを見込んでくれた七尾さんに、恩返しがしたい。