絢なすひとと
司さんの着物姿は、これまたため息がこぼれるほど素敵で。
他の社員に気づかれないようにと思うのに、つい目で追ってしまう。

社内恋愛も初めてだというのに、相手が社長だなんて、完全にわたしのキャパを超えている。
仕事のことも、着物のことも、まだまだ勉強しないといけないことがいっぱいだ。
だからこそ毎日が充実していると感じられる。

目的のホテルに到着して車を降りるとき、階段を使うとき、さりげなく彼が手を添えてくれる。
目にも美しい季節のランチコースに舌鼓を打ちながらも、おしゃべりは尽きなかった。

「夏の帯の素敵なものがたくさん入っているから、SNSに載せたいんですけど。帯をずらっと並べても、なかなかいい写真が撮れなくて。良さがうまく伝わらないからもどかしくて。もっと写真の腕も上げないと」

「いつもよく撮れてるよ。俺もときどき管理用IDでログインしてチェックしてるけど、アクセス数も右肩上がりだし。PR効果があって、経費が低く抑えられるのが経営者としてはありがたい」

ちゃんと見てくれてるんだな、と思うと胸がじわっと熱くなる。
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