絢なすひとと
浅い眠りを繰り返して夜が明けた。
出勤するのに気が重い、なんてほづみ屋で働くようになって初めてのことだ。
気力を振り絞って支度をして、家を出る。
電車に乗ってしまえば、揺られているうちに職場へと近づいてゆく。
今日は早い時間から着付けの個人レッスンの予定が入っていたので、出勤してすぐ着物に着替えた。
美幸先生が選んでくれたのは、いかにも夏らしい装いだった。
翡翠色の市松絣の紬に、鈴紋様の帯という目にも涼しい組み合わせだ。
「顔色がさえないようだけど、夏バテかしら」
美幸先生にも心配されてしまって、恐縮しきりだった。
肌に添い包んでくれる着物が力をくれるのか、装いを整えると不思議なことに気持ちも少し落ち着いた。
ファッションが内面にも影響するのは、女性なら誰しも経験があるだろうけど。
着物の仕事をするようになって、ますます実感するようになった。
着物に身を包むと、スッと背すじが伸びる。
抽象的だけど、自分が少し大人になった気がするのだ。
出勤するのに気が重い、なんてほづみ屋で働くようになって初めてのことだ。
気力を振り絞って支度をして、家を出る。
電車に乗ってしまえば、揺られているうちに職場へと近づいてゆく。
今日は早い時間から着付けの個人レッスンの予定が入っていたので、出勤してすぐ着物に着替えた。
美幸先生が選んでくれたのは、いかにも夏らしい装いだった。
翡翠色の市松絣の紬に、鈴紋様の帯という目にも涼しい組み合わせだ。
「顔色がさえないようだけど、夏バテかしら」
美幸先生にも心配されてしまって、恐縮しきりだった。
肌に添い包んでくれる着物が力をくれるのか、装いを整えると不思議なことに気持ちも少し落ち着いた。
ファッションが内面にも影響するのは、女性なら誰しも経験があるだろうけど。
着物の仕事をするようになって、ますます実感するようになった。
着物に身を包むと、スッと背すじが伸びる。
抽象的だけど、自分が少し大人になった気がするのだ。