沈黙の戦い〜凛々しい棋士のギャップ〜
「大丈夫ですか?」

 お風呂場が静かなので倒れていないか声をかけた。

「は、はい……。温かいです……」

「しっかり温まって下さいね。バスタオルとスウェット置いておきますね。弟のなので、合うかわからないですがこれしかないので」

「何から何まですみません……」

 返事がしっかり返ってきた事に安心し、お風呂場を後にした。

 キッチンで、自分の食事と男性の分も用意する。

 年齢は若そうだがまだ顔すらはっきり見ていない。見ず知らずの人を、連れて帰ってきてお風呂に入れている自分が未だに信じられない。

 でも、なぜか放っておけなかった……。

 弟以外の男性を部屋に入れるのも初めてだし、普段から男性と接する機会も殆どない職場なのだ。お預かりしている園児の父親くらいしか男性に会う機会がないのだから……。

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